キャブのセッティング(ケイヒン系)

ここでは一般的なキャブのセッティングについて記述する。
キャブの種類によって調整で出来る物の種類と範囲は異なるので注意。

記述内容はケイヒンのCRPEやPC、FCR(加速ポンプ関連以外)については当てはまるはず。ミクニのキャブは詳しくないので当てはまらないかも。

各キャブについては別途記載(画像あり)。リンク貼り付け予定。

セッティング箇所

キャブのセッティングは、スロージェット、エアースクリューもしくはエアージェット、ジェットニードル(針)、メインジェットで行う。

アクセル開閉度で、(FCRセッティングマニュアルを参考)
 ・スロージェットはIDLE~3/8まで
 ・エアースクリュー、エアージェットはIDLE~2/8まで
 ・ジェットニードル(針)は中間
 ・メインジェットは中間~全開
のセッティングとなるが、これらは足し算であることに注意。

例えば、スロージェットを大きくした場合、スロージェットから出るガソリン量が増えるが、IDLE~全開にかけてずっと出続けるため、全開時にも影響を及ぼす。
メインジェットを大きくした場合も同様で、IDLE時にも少量のガソリンがメインジェットから出ているため、スローに影響を及ぼす。
その影響量はそれほど多くはないので、ジェットを数番上げた程度で他のジェットの交換が必要になることは稀だが、エアースクリューの調整は必須。大きく番手を変えた場合や、ジェットニードルを変更した場合は影響が大きいのでジェット交換が必要になるかもしれない。

スローエアージェットについて
 普通に売られているキャブでスローエアージェット単体でセッティングするものはほとんどなく、エアースクリューで調整できる。
 スローエアージェットからエアースクリューに変更できる場合もある。
 スローエアージェットで設定するキャブは大量にジェットが必要となるため、やめておいた方が良い。(タダでもいらない)

セッティングする順番

アイドリングしないと話にならないので、まずはスロー系、次にメインジェット、最後にジェットニードル(針)という順番がよいだろう。

先に記述した通り、設定を変えると他の部分にも影響するので、1回ずつのセッティングで済むことはまずない。
最低10回(最悪数十回やって妥協する)のセッティングは必要と考えてほしい。

セッティング方法(初期状態)

メインジェット、スロージェット、ジェットニードル(針)、エアースクリューを以下に合わせる。

 ・スロージェット、メインジェットは適当な番手(初期のまま)
 ・ジェットニードル(針)のクリップを真ん中
 ・エアースクリューを全閉から1回転戻し

セッティング方法(スロー系)

○概要
スロージェットの番手とエアースクリューの戻し回転数でセッティングを行う。
エアースクリューで調整できるため、最初からスロージェットを購入しておく必要はなく、設定範囲外(0.5回転~1.5回転戻し)になった場合に1段違い(2~3番単位)を購入する。
スロージェットは、キャブ毎に形状が異なり(一部共通)、2~3番おきに35~50番ぐらいまである。

○セッティング方法
エンジンをかけて、アイドリングで一番回転が上がる位置エアースクリューを0.5回転~1.5回転戻し(キャブにより異なるかも)まで調整し、いい位置が見つかればそこから約15分(1/4回転)戻す(締める)。
0.5~1.5回転戻しに収まらない場合、スロージェットを交換する。0.5回転以下の場合はガソリンが薄いため番手を大きく、1.5回転以上の場合はガソリンが濃いため番手を小さくする。
アイドリングしない場合は、アクセルを開けてエンジンをかけ、エアースクリューを開け方向と締め方向に振ってアクセルを全閉にして様子を見て、よりアイドリングしそうな方にスロージェットの番手を1段(2~3番単位)変える。
番手を変更した場合は、エアースクリューを1回転戻しに戻し、再度上記を実施する。

多少濃くても薄くてもアイドリングはするし、走れてしまうため、以下の確認を行う。

○セッティングの確認方法
①アクセルを少し(1/4回転以下、エンジンは3000回転ぐらい)開けてキープする。
数秒後、
  「バラッバラッ」と音がするようなら濃いので、薄めにセッティングを変更する。
  パワー感がなくなり回転が落ちるようなら薄いので、濃いめにセッティングを変更する。

②急坂を降りてみよう!
全閉(IDLE)で「パンパン」という破裂音の様な排気音がしたら薄いので、濃いめにセッティングを変更する。この音は出ない場合もあるので参考程度に。
なお、濃い場合もこの音は出ないので、濃すぎるか確認することはできない。

○多連キャブでのエアースクリューの微調整方法(全体のセッティングが完了した後に実施)
複数のキャブがある場合、製品の質としてキャブごとに微妙にセッティングがずれている場合がある。
これを合わせる方法として、以下を実施する。

エンジンをかけ、3000回転付近でアクセル開度をキープ(このセッティングが終わるまでずっと)する。
各キャブ毎に、一回エアースクリューを全閉にし(エンジンの回転が落ちる)、そこから少しずつ開けていく。
一番回転が上がったところから15分(1/4回転)戻す(締める)。
各キャブ毎に実施するため、それぞれのキャブで戻し回転数が異なるかもしれないが、それで良い!

また、エンジンが一度カブるのとアクセル開度を一定にするのがポイントなので、失敗した場合は最初からやり直す。

なお、CRの4連キャブで生産ロッドの違うキャブが組み込まれていて、スロットルバルブの初期位置が異なり、全くアイドリングしない物があったとの情報あり。

セッティング方法(メインジェット)

○概要
メインジェットの番手を変更することでセッティングを行う。(スロー系のエアースクリューのような調整はない)
メインジェットは、キャブ毎(一部共通)に形状が異なり、番手は2~3刻みで80~170番ぐらいまである。
車種に対応するキャブを購入すれば、大体合うメインジェットが入っている。
また、ボアアップキットなどの場合、説明書に推奨の番手の記載がある。
メインジェットは多少ずれていても問題なく走るので、最初に購入するのキャブに入っている番手から5番おきに前後2~3種類。
セッティング時は10番おきくらいで変えて様子をみて、その後、5番単位でセッティングを詰める。
シビアなセッティングが必要な場合のみ、そこから2~3番おきのメインジェットを購入し、セッティングを詰める。

○セッティング方法
何度もジェットを交換して、全開付近で一番エンジンがスムーズに回りパワーが出るジェットを見つける実走合わせ。

○セッティングの確認方法
走行中、エンジン回転数がある程度上がっている状態で、アクセルを全開にキープし、エンジンの回り方を見る。
ただし、全開にした直後は、ジェットニードルや加速ポンプが影響するため、その後の状態をみる。
全開にして数秒後、、
 【セッティングが大きくずれている場合】
   「ガボッガボッ」と引っかかる感じや、その後に失火する場合は濃いため、ジェットの番手を大きく下げる。
   パワーがなくなる感覚がある場合や、その後に失火する場合は薄いため、ジェットの番手を大きく上げる。
 【セッティングが大体出ている場合】
   現状のジェットの番手を基準に、上下に5番単位で10番ぐらいまで変更し、一番パワーが出るジェットを探す。
   (先に記述の通り、10番ぐらいずれていても違いがわからない場合、調子の良い3つの真ん中とかで選ぶ)

なお、4連キャブの場合はセッティングがずれていても走ってしまうが、単キャブの場合は、セッティングはシビア。

セッティング方法(ジェットニードル(針))

○概要
ジェットニードル(針)のクリップを上下に変更することでセッティングを行う。5段階か7段階調整できる。
クリップの位置を上にすると針が下がり薄く、下にすると針が上がり濃くなる。
キャブによっては針の種類(太さや形状が異なる)が複数あるが、最初に購入しておく必要はない。クリップのみではセッティングが出ない場合に購入する。
購入する場合、現状でクリップが一番下の場合は細め、一番上の場合は太めを選択する。

○セッティング方法
中間(1/2回転付近)でエンジンのもたつきがあれば、クリップ位置を変更。
走行中に中間をキープしたり、全開(高回転)→全閉(中回転)→全開(高回転)など、中間が絡むいろいろなパターンでエンジンがスムーズに回るクリップ位置を探す。
濃いか薄いかはわかり辛いのでクリップ位置を上下に2段程度振って確認する。
どの段数でもセッティングが出ない場合は針自体を交換する。

○セッティングの確認方法
中間からの加速時や、中間をキープした時に、
 「ガボッガボッ」と引っかかる感じや、その後に失火する場合は濃いため、クリップ位置を上げる。→針が下がる。
 パワーがなくなる感覚がある場合や、その後に失火する場合は薄いため、クリップの位置を下げる。→針が上がる。

なお、ジェットニードル自体を変更した場合は、影響が大きいため、スロー系やメインジェットの再セッティングが必要。

失火・カブる症状について

原因は以下の2つ。
 ・ガソリン量が多く空気が少ない場合、ガソリンが燃えきらずにプラグが湿って点火しなくなる。
    →「ガボッ、ガボッ」とした後に失火。プラグが濡れているため、他の開度にしてもしばらく調子悪い。
 ・ガソリン量が少なく空気が多い場合、ガソリンが足りずに点火しなくなる。
    →パワーが無くなって失火。他の開度にすると回復しやすい。

これらは、どちらも点火していないので、濃いのか薄いのかかわかり辛いが、「ガボッ、ガボッ」というか言わないかが1つの判断材料となる。
濃いか薄いか良くわからない場合は、調子の悪いアクセル開度に対応するセッティングを大きく振って様子をみる。
メインジェットなら10番程度、スロージェットなら最少単位(2~3番)、クリップなら2段程度。

プラグの焼けによる確認

プラグはしばらく使っていないと焼け色が出ないので、セッティングの確認には向かない。
プラグが濡れていたら濃過ぎるってことぐらいしかわからない。

しばらく使って、プラグが真っ黒なら全体的に濃く、白く(ピンクっぽく)焼けていたら全体的に薄い。
ただし、どの開度をどれだけ使ってプラグがそうなったのかがわからないため、サーキットで常に全開の場合以外はどの設定の影響か確認のしようがない。

よくアクセルを一定開度に保って走行し、そのままエンジン切って確認とか言われているが、即エンジンの回転自体を止めないと、キャブからガソリンを吸い込んでしまいプラグが濡れる可能性があるため、確認は難しい。

プラグによるセッティング

プラグの番手は車種によって大体決まっているが、同系の番手違いがあり、変更することでセッティングが変わる。

番手を大きくする場合、高回転が回るようになるが、点火しにくくなる。
番手を小さくする場合、点火しやすくなるが、高回転が回らなくなる。

プラグでのセッティングの例として、
①モンキー系エンジンでノーマルでCR6HSA。ボアアップキットの説明書でCR7HSAが指定。
これは、エンジンを高回転まで回すためのセッティング。

②並列4発のエンジンだと中央2発が外側2発より高温になるため、焼け方にムラが出る場合がある。
その場合、焼け過ぎているプラグの番手を大きくしてみる。→点火しにくくなる。(純正キャブなどでセッティングが出来ない場合の奥の手って感じ)

濃いのと薄いのどっちが良いか?

断然濃いめの方がエンジンには良い。

ちょっと薄い場合は、エンジンが高温となり焼き付きやすくなる。ただし、エンジンは回る。
ちょっと濃い場合は、プラグが黒くなる程度で若干回転が落ちるが意外と走る。特にメインジェットは多連キャブなら10番ずれていてもそんなに問題なく走ってしまう。

もし、高回転を回したくてなるべく薄くしたい場合は、全開時の設定を薄めにし、スロー系を濃いめにすれば、焼き付きそうな場合は、アクセルを戻してやれば回避できる。
全体的に薄いのは避けた方がよいだろう!

インシュレータ(マニホールド)が破れて2次空気を吸った場合、空気が流入するのでセッティングは薄くなる。
焼き付きの原因となるため、インシュレータ(マニホールド)がひび割れてきたら速攻で交換しよう!

高度や気温による影響

どちらも空気の密度による影響。

○高度
高度が上がると空気が薄くなるため、セッティングが濃くなる。
峠道などが好きで山に行くことが多い人は、平地でのセッティングより5番~10番程度メインジェットの番手を落とすとよいかもしれない。

○気温
気温が上がると、空気密度が薄くなりセッティングが濃くなる。
気温が下がると、空気密度が高くなりセッティングが薄くなる。

セッティングのシビアなキャブであれば夏季・冬季でセッティング(最低でもエアースクリューの調整)が必要。
春・秋に完璧なセッティングを出してしまえば、夏・冬も許容範囲内でそのまま乗れるかも。

各キャブのセッティング方法・データ

以下に各キャブのリンクを記載(キャブ名称をクリック)。

メーカー名 キャブ名称 対象
ケイヒン FCR28 CD50(モンキー・カブ系)
ケイヒン FCR33 フォルツァ(MF-06)
ケイヒン PE24 CD50(モンキー・カブ系)
ケイヒン PC18? CD50(モンキー・カブ系)
ケイヒン CR SPESIAL(31φ) Z750FX-Ⅲ(GPz750エンジン ボアアップ済み)

inserted by FC2 system