穴あきマフラーの溶接について

バイクが古くなるとあちこち錆びるけど、最初にダメになるのが鉄のマフラーではないだろうか。

マフラーは熱が入るわけで酸化しやすく、特に溶接部分は製造時に高温に晒されているので腐食しやすい。

画像はリード90のマフラーで、エキパイのヒートガードを止めるナットの溶接の周りが割れてしまった。
「ベッベッ」っとすごい轟音になったので、中華マフラーに交換してあったのだが、せっかく溶接機を導入したので溶接にチャレンジしてみた。

溶接機・必要なもの

用意した溶接機はTIGとアークが使用できるタイプ。単相三線式の200V(家庭用の200V)で動作できる。
また、アルミを溶接する場合、交流対応のTIG溶接機が必要となる。安いものは直流のみなので気を付けること。

TIG溶接だとアルゴンガスが必要となる。
ちなみにこのボンベは7立米でレンタル料金は中身込みで9800円、期間は3か月。使い切らない場合は延長出来、3か月毎に600円。ボンベの補償金が初回時にかかり、2万円(ボンベ返却時に返ってくる)。

なお、ボンベに流量計は付いていないので、自分で用意する。(これは溶接機のセットで購入)
溶接に必要な道具。上から
・アーク用のトーチとアーク用溶接棒(鉄用)
・自動遮光面
・TIG用溶接棒(鉄用、アルミ用、ステンレス用)
・TIG用トーチ、アース(TIG、アーク両用)
・手袋

バイクは鉄が多いので、鉄用の溶接棒を購入。アルミとステンレス用(少量)は溶接機のセットで付属のもの。

せっかくアルゴンガスも用意したのだから、今回はTIG溶接を行う。

溶接の実施

まずは溶接部分をロッキングプライヤーで固定。
初めての溶接で・・・。

すっごいモリモリになりました。

画像とってないのですが、溶接した部分に穴が開き、ひたすら穴を埋めていった結果です。
厚みで電圧を調整するのだが、2mm厚予想で70Aぐらいで実施したところ、予想以上に薄く(脆く)なっていて、電圧が高すぎた。

電圧設定は低め(作業終わった後に考えると10Aぐらいかな)から試した方がいいですね。
あまりにもモリモリだったので、サンダーで削ってみました。
ヒートガードを取り付けるナットが3か所(1か所は溶接した場所)あって、全部のボルトが折れている。
その為、ラスペネを噴きかけてしばらく放置した後、エキストラクターを使ってボルトを取り外そうとしたが、いかんせん錆びが酷い。
案の定折れました!

無理!!取れない!!!
サンダー(切断砥石)でナット部分を切り取り。
研磨ディスク(アルミナ#80)に交換して切断面をきれいに。
きれいになったチャンバー付近に、ナットを溶接しようとすると・・・
はい、また穴開きました!一瞬でした!

電圧はさっきより落としたけどダメ。この時は40Aぐらいだったか。やっぱり10Aぐらいから攻めた方がよさそう。

ちなみに半分ぐらい埋めた時の画像。
全部埋めました!

これをサンダーで研磨すると、亀裂が有ったり、凹んでる部分があったので・・・
再度肉盛り。

溶接部の周囲が錆びが出ている。これが溶接部が脆くなる証拠ではないだろうか。
サンダーで均した後、ナットを溶接。

今度は電圧が低すぎたのか、なかなかくくっつかず、時間をかけたらナットが焼けてしまった。40Aぐらいだったかな。
一応ボルトは入るのでまあいいか。
エンジン側のナットを溶接。

こちらは全然穴開かない。電圧も上げ方向でナットを溶接。50Aぐらい。
中の錆び具合によって電圧を調整しないといけないみたいだが、裏側は見えないわけでメッチャ低い電圧から試していった方がいい。
3か所溶接完了。

最初にやった割れの修正部は肉盛り盛りにしたので、ナットの対応はしない。2本止まってれば問題ないだろう。
ヒートガードを当ててみるとナットの位置はよさそうだ。

塗装

溶接した個所やその他にも錆びがあるので、LAVENの耐熱スプレーで塗装。

片側を塗ったら1時間ぐらい放置して乾かす。
裏側も塗装。

1時間ぐらい放置して乾かす。

塗り残しや、薄い場所があれば、再度塗装。
ヒートガードを装着して完成。

ボルトは錆びるのが嫌なので、ステンレスのキャップボルト。

アルゴン溶接について

初心者なので、あまり参考にならないだろうが、やり方や今回感じたことを記述すると、

TIG(アルゴン)溶接の手順は、
 ・溶接する周辺の被膜を削る。
 ・溶接するもの、もしくは、下に引く鉄板などにアースを付ける。
 ・トーチのタングステンバーの先端を確認。トーチから5mm程度出す。尖ってない場合は砥ぐ。
 ・板厚に合わせて、電圧、アルゴンガスの量を設定(以下に参考値を記載)。
 ・溶接部分にトーチ(タングステンバー)を5mmぐらいまで近づけてトーチのスイッチをオン。
 ・すると、トーチを当てた(実際は離している)部分がプール(遮光面から見ると色が変わるのがわかる)となる。
 ・このプールに溶接棒を持っていくと溶接棒が溶けて肉が盛られる。
 ・この肉をうまい具合に移動させながら重ねていくとビートが出来る。

やって思ったのは半田付けに似ている。
半田ごてで基盤の半田を溶かして、溶けた半田に新しい半田を付けると肉盛りされるイメージ。

気を付けなくてはならないのは、錆びが出ている部分は脆く、すぐに穴が開いてしまうということ。
電圧低めで試し、プールが出来ない場合は高めにしていく。

買った溶接機の説明書に記載されていた参考値を以下に記述。

板厚 電流 アルゴンガス流量(L/min)
ステンレス 軟鋼 アルミ・チタン
1mm未満 10~40A 4 6 6
1mm 40~70A 4~6 8~10 6~8
1.5mm 50~85A
2mm 60~100A
3mm 120~150A 8~10 10~12 8~10

トーチのタングステンバーはすぐに先が丸くなるので、定期的に砥ぐ必要がある。
特に部材に先端をくっつけてしまった場合は、速攻で丸くなる。

研ぎにはグラインダーやベルトディスクサンダーなどで行う。
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