フロントフォークのキャップについて

昔のバイクのフロントフォークで、エア圧で固さを調整できるものがある。

Z750FX-Ⅲもそのシステムで、フォークの上にエアバルブが有り、そこからエア圧をかけることができる。

なお、GPz750(F)やニンジャ(GPz900R、GPz750R)の一部?も同じシステムだが、エアバルブの場所が異なり、インナーチューブの途中で左右両方にエアが入る様にしている(エアバルブは一つ)。
フロントフォークの先端にプラスチックのキャップが付いている。
このキャップを回して外すとエアバルブがあり、キャップはこのエアバルブのネジを利用して固定されている。

ネジ周りのプラが若干割れていて緩く、フォークをカスタムに出した時に片方がなくなってしまった。
キャップ無しで乗っていたのだが、錆が気になりだしたので、キャップを自作することにした。

フロントフォークのキャップの作成

プラスチックのキャップから寸法を測り、簡単な図面を作成。
アルミ2017材をキャップサイズ×2+αのサイズに切りだし、旋盤に固定。
切断面を平らに削る。
なお、40mmで十分だったのだが手持ちがないので、50mmから削ることにした。
中央に7.2mm(エアバルブのネジ山の下穴サイズ)のドリルで深さ15mm程度の穴をあけ、その穴を使って回転センターで部材を固定。

サイドを50mmから34.8mmになるまでひたすら削る。
削る長さはキャップの高さ(約18mm)+α(切断後に平らにする分を考慮)。
内側の溝(深さ4mm)を大き目のドリルで開けて中ぐりする。
フォーク内に入る部分の外周(深さ4mm、幅2mm)を削る。

あとは中央の穴にネジ山を切れば内側は完成となる。

反対側も同じように削りたいが、今削った方をそのまま咥えると挟み込み甘いため、咥えるジグを作成。
左が削ったもの、右が割りを入れたジグ。

ジグは、50mmのアルミを適当なサイズに切り出し、センターに穴をあけ、キャップのサイズ(段付き)に中ぐりしたもの。
良いサイズに削れたら、バンドソーで割りを入れる。
ピコ太郎の「アポーペン」みたいに、ブスッと挿し込みます。

なお、切断用に部材中央に溝を入れている。
反対側も同じように削る。
ジグに付けた状態でバンドソーに”がっちり”固定し、中央でカット。
(あまり小さいと固定できないため、ジグでの固定が必要)

カットする場所は溝を切っているので一目瞭然。
1個ずつジグで固定し、切断面を平らに削り、高さも合わせる。

プラスチックのキャップはサイドが斜めで、そのあと、緩やかなカーブで中央がこんもりしているが、それを旋盤で手削りする技術はないため、端だけ斜めに削った。

斜めに削った面のバリや中央の削り跡を、耐水ペーパーで綺麗にする。
中央に開けた穴にエアバルブ用のネジ山をタップで切る。

今回の作業で一番大変だったのが、このタップを探すことだった。

○エアバルブ(タイヤバルブ)用のタップについて

エアバルブのネジ山は特殊で、測ってみるとネジ山のピッチは0.8、幅は7.6mm(→8mmサイズ?)。通常のタップセット(8mmのピッチは1.0か1.25が入っている)には入っていないし、タップを売っている所で探しても全く見つからなかった。
補修用の工具は見つけることができるけど、新規にネジ山を切るタップはなかなかない。
で、ネットを徘徊して苦労して見つけたのが、モノタロウで売っていたSKH社の「タイヤバルブネジ用タップ 8TV32 SKH (#2中)」。

(#1先)、(#2中)、(#3上)の3つがあるし、「8CTV30 SKH」とか種類があるので、質問した結果、8がサイズ(mm)で、32がピッチ(1インチに32山→25.4mm÷32山≒ピッチ0.8)、TVが自動車用(CTVは自転車)って意味とのこと。
(#1先)、(#2中)、(#3上)は、3段階にネジ山を切るとのことで、(#1先)から順で、(#3上)が仕上げ用らしい。(#2中)だけ使う人も多いとのこと。

鉄にネジ山を切るわけではないし、(#2中)で十分。使ってみると、手持ちのどのタップよりも切れ味が良かった。

なお、これがあればオリジナルのエアバルブキャップが作成できる。

切削完了!

アルミとプラのキャップの中央の厚さはほとんど変わらないけど、曲線か平面かで厚みが全然違うように見える。
全部ひっくり返した画像。

アルマイト加工

アルミ2017材を使用しているため、アルマイト加工が必要。
これから依頼するので、出来上がったら画像をアップ。

キャップの装着

アルマイトはまだだけど試しに装着した画像。

上から。
横から。

ちょっと分厚く見えるけど、NC旋盤でもないと綺麗に曲線で削れないのでこれが限界。
なお、プロの加工屋さんに聞いたところ、曲線を削るには専用のバイトを削って作るとのこと。
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