CD50(88cc)でのFCRセッティング(カブ・モンキー系横型エンジン)

CD50(ベンリー)のエンジンは横型エンジンで、細かい違いはあるがスーパーカブやモンキー、ゴリラ、ダックスなどと基本設計は同じ。
中華125ccエンジンから88ccボアアップエンジンに変更したため、FCRの再セッティングを行った。

加速ポンプが濃すぎる対応も行っているので、ほかの車種でも参考になるかも。

加速ポンプと小排気量マシンについて

FCRの加速ポンプは調整がタイミングしかなく、セッティングには最悪!!
特に小排気量のバイクにとっては命取り。

加速ポンプ内にはラバー(ダイヤフラム)があって、これが押されることによって、ガソリンが噴出する仕組み。

この加速ポンプは、4連キャブであっても単キャブであっても1つで、排気量に関係なくガソリンの噴出量は変わらない。
セッティングマニュアル上では0.6cc~0.9cc出るとのことだが、1000ccの4気筒だと1気筒250ccあたり0.15cc~0.225ccだが、単発なら丸丸の0.6cc~0.9cc。
排気量で比較すると1000ccと88ccでは、その比率は11.36倍!

小排気量では無理です!加速ポンプがそのまま利くと必ずカブります!
中華125ccエンジンでは、中間で時折「ガボッガボッ」とカブりながらも失火することは無く何とか走ったが、88ccでは「ガボガボ」言った後に失火、開閉度を変えて何とかエンジン停止は免れるって感じ。

ジェットニードルでの加速ポンプへの対応

加速ポンプが利くあたりのセッティングをとりあえずジェットニードルで合わせるようと思い、いろいろジェットニードルを試したので情報を記載する。

FCRスモールボディー(φ28~φ33)のジェットニードルの形状。

テーパー角、切り上がり、ストレート径で種類がある。


例として記されている「90ETK」の・・・
(E)テーパー角は、上から下までの太さの差を変更したい場合に変更する。
  →途中まで調子よくて全開に差し掛かる部分のみ調子悪い場合など。

(T)切り上がりは・・・。意味不明。
  「なんでか?」って、絵のLの位置が曖昧で、角度が変わった後のなんだかわからない部分を示している。
  →クリップ下げた感じになるらしいけど、実際はそんな感じはしない。
   角度が変わる部分は・・・(下記参照)

(K)ストレート径は、単純に全体の濃さを変更したい場合に変更する。
  →全体に濃い場合はZ方向、薄い場合はA方向。
   実際には切り上がりも・・・(下記参照)

FCRスモールボディー(φ28~φ33)のジェットニードルの種類。

表中が1本で購入できるジェットニードルで、これ以外は20本単位で購入とのこと。

これを見ると一番薄いジェットニードルは、90EZVか90ETZか90DZUあたりだろう。

画像で赤線が付いてるのが、試したもの。

いろいろジェットニードルを試して走ってみたが、どうも思った通りの反応が返ってこない。そこでそれぞれのジェットニードルの太さをマイクロメーターで測ってみた。
0.01mm単位までしか測れないので最少桁は誤差がある。また、中部はおおよその位置で、しかもそのあたりから太さが変化するので参考程度に。

上表の列 番手 上部 中部(参考値) 下から3cm程度 下部
1 90ETN 2.72 2.65 2.57 2.18
2 90EZN 2.72 2.72 2.62 2.24
2 90EZV 2.79 2.69 2.61 2.24
3 90FTM 2.71 2.71 2.58 2.11
3 90FTN 2.72 2.72 2.58 2.12
3 90FTP 2.73 2.73 2.58 2.12
3 90FTS 2.75 2.75 2.58 2.12
3 90FTZ 2.83 2.73 2.57 2.13
6 90DZU 2.78 2.66 2.58 2.32

ストレート径の違い「90??○」はジェットニードル上部の太さがきちんと変わっていることが確認できた。

先端は「90?Z?」が太め、かつ「90EZ?」より「90DZ?」の方が太くなっている。
テーパー角が変われば先端の太さが変わり、切り上がりが下方向に行けば先端はさらに太くなるってことだろう。
ただし、ストレート径の違い「90??○」ではほとんど変わらない。あれっ???

どうもストレート径が変わると、中間部分で太さが変わり出す場所がジェットニードル毎に異なっているようだ。

上が「90FTZ」(太)で下が「90FTM」(細)。

画像ではわかりにくいが、触り心地や光沢の変化から太さが変わり出している部分に矢印をつけた。
これって「切り上がり」で変化するのだと思うのだが・・・。実際には太さで変わっている。

上表で、ストレート径が異なっても先端の太さがほとんど変わらないのは、太さが変化しだす位置がこのように異なるからのようだ。

上表で、ストレート径が大きいほど上部と中部の太さに差が出ているのも納得だ。

実際に走って一番調子がいいのは「90FTS」で、より薄いはずの「90DZU」や「90FTZ」は加速ポンプが利き始めた段階でガボってしまう。

上記結果から推測すると、ストレート径が太くなると径が細くなり始める場所が上(早く)なるため、実際にはアクセル開度が少ない段階でメインジェットからの燃料が濃くなり、カブってしまうようだ。

そうすると、細いジェットニードルを使って、スロージェットを絞った方が良いと考えられるが、「90FTM」とか使うと「90FTS」より調子が悪い。
多分、アクセル開度とその時のエンジンの回転数・燃焼効率など、絡み合っていると思う。実際に使ってみないとわからないってこと。

結果、ジェットニードルではセッティングの限界。加速ポンプどうにかしよう・・・。

加速ポンプの流量調整加工

排気量に対して過剰な量のガソリンが加速ポンプから噴射されている。まずはこの量を調整したい。

加速ポンプの流量を変更するには、ガソリンが流れる通路を細くしてやれば良いと考える。

現物を見て、失敗した場合の被害が少なく、通路を細くできるところを模索する。

加速ポンプの上部。

左がダイヤフラムで、その右にある小さいOリングがガソリンが流入する穴。一方通行。
その左下の穴が、ガソリンを噴出するキャブ中央に繋がった穴。

こん左下の穴を細くすることでも対応できそうだが、キャブ本体なので失敗すると被害が大きい。
加速ポンプの下部のカバー。

上の小さいOリングがガソリンの噴出口に繋がる穴。
その右がガソリンの流入口。

ガソリンの噴出口はOリングが入っており、加工するとOリングの気密が漏れる可能性がある。
加速ポンプの下部のカバ―(内側)。

側面に穴が開いており、左が噴出口につながっている。
右がガソリンが落ちてくる穴。

左側の穴を小さく出来れば、噴出量を調整できそうだ。失敗しても被害は少ない。
1300円ぐらいらしい。
穴を小さくするには、一度穴を埋め、小さな穴に開け直せばいい。

じゃあまずは溶接!

アルミ溶接初心者にはきつかった。
湾曲しているので、狙ったところに上手くプールが出来ない。
リューターで削って余計な肉を削ぎ落とす。
ピンバイスを使って1mmほどの穴を開ける。

穴だらけに見えるって?溶接で蕩けてしまったんですよね。
下側は0.6mmのドリルが折れてしまったし・・・

ノーマルの加速ポンプと加工した加速ポンプの噴射時間を比較してみる。

ノーマルは・・・

ノーマルでの噴射時間は「3秒07」。

1mmに加工したものは・・・

1mmに加工したものの噴射時間は「3秒78」。
勢いが若干減って、噴射時間が伸びているのがわかるだろうか?

0.5mmに加工したものは・・・

今度は0.5mmに加工してみる。

溶接で穴を塞ぎ、バリを落とした。

アマゾンで注文して何故かなかなか来ないクラフトツールのドリルの刃。全然来ないのでキャンセル。
ピンバイスではなく、ドリルに付けられるものがあったので、それに変更。
溶接棒を溶かして一滴垂らしてしまったので、下が汚れてしまったが、今回の方が1mmの時よりうまくいった。

0.5mmに加工したもので動作(噴射)を確認してみると・・・

0.5mmに加工したものの噴射時間は「3秒86」。

ノーマルとの流量の比率は、
1mmで「81%」。
0.5mmで「79%」。

勢いが若干減って、噴射時間が伸びているのが、1mmと大差ない。

加速ポンプの吐出総量を調整

吐出総量の調整するものは売られており、「加速ポンプの調整パーツ」に記述している。

これらで調整できるが、もっと簡単に安く簡単にできる方法を見つけたので記載する。

両方6mmのワッシャー(ステンレス)で、左は外径が15.9mm、右が12.8mm。

使うのはこれの左側で、ちょうど加速ポンプのカバー内に入るサイズ。

ホームセンターなどで1枚10円程度で買える。

ワッシャーを入れてダイヤフラムを押した動画。

可動域が狭くなったことがわかるだろうか?
ワッシャーは2枚までは問題なく装着出来ることを確認している。3枚まではいけそうな感じ。

ワッシャー入りのカバーを付け、加速ポンプを動作させるとこんな感じ。

噴射時間が短くなったことがわかるだろう。ちなみにガソリン通路加工1mmを行っているカバーでの動画。
噴射時間は、
  ワッシャー1枚で「2秒03」。
  ワッシャー2枚で「1秒11」。
  
 (参考値)
  ワッシャー無し(ガソリン通路加工無し)で「3秒07」。
  ワッシャー無し(ガソリン通路加工1mm)で「3秒78」。

ただし、アクセル開度が、
  ワッシャー1枚では、3/4程度
  ワッシャー2枚では、1/2程度
から加速ポンプが利かなくなる。

もうちょっとガソリンの流量を減らして、開度全域で加速ポンプが利くようになれば、小排気量でも行けそうだが、そこが問題・・・。

加速ポンプ押し量の調整

加速ポンプをゆっくり押すようにすれば、ガソリンの流量が減る。
そのためには、キャブ右横にあるレバーを押す量を減らしてやればいいのではないかと考える。
テコの原理で、支店からの距離を長くれば、押す量は減るはず。

スロットルの開閉で回転する部分に止まっているロットが、スロットルを開けると下側に動き、加速ポンプ側のレバーを押す。

画像はスロットル全閉、加速ポンプを押す前。
画像はスロットル全開、加速ポンプを押しているところ。

加速ポンプ側のレバーを延長してやれば、可動域は少なくなるはず。
加速ポンプとスロットルの間のロットは割りピンで固定されているので外すことができる。
外して思ったのは、固定部の右にもスリーブが入っていない穴があり、4連とか大型バイク用だとこちらの穴を使っているのではないかということ。

試しに差し込んでスロットルを開けてみると・・・
加速ポンプ側のレバーが大分下まで押される。

大型用のFCRは現状手元にないので、確認できないが・・・
レバーを延長するステーを作ってみた。3段階調整。

試作なので、かなり雑だが・・・
1段目の穴で、スロットルを開けると若干レバーの可動域が減った。

マジックで線を書いているのがノーマル位置で、ノーマルで線を書いたときはこの位置からは見えないぐらい。
2段目の穴で、スロットルを開けると1段目よりレバーの可動域が減った。

マジックで線を書いているのがノーマル位置。
3段目の穴で、スロットルを開けると2段目よりレバーの可動域が減った。

マジックで線を書いているのがノーマル位置。
Rの付け方が良くなかったようで、レバーの開始位置がずれていた。

3段目の可動域をマジックで書くと、内側の2本。

FCR28と記載部分の右側で、線の幅を計ると、ノーマル 11.24mm、3段目 7.25mmとなり、延長すると65%程度に可動域を減らすことができた。

装着して、3段目(一番外側)で加速ポンプを可動させた動画。
(下部のカバーは加工無しのノーマル)

噴射時間は2秒03。
ノーマルは3秒07なので、約66%まで削減された。

ワッシャー仕様等では全開付近で加速ポンプが利かなくなるが、この方法であれば吐出総量を減らしつつ全開まで加速ポンプの効果が発揮できる。

マニホールドに干渉しそうなので、若干の改修を加えて商品化(専門業者に製作を依頼)を検討中。

購入希望の方がいましたら連絡ください。

FCR28のセッティングデータ

参考程度にセッティングデータを記載。

車種 エンジン仕様 排気量 加速ポンプ メインジェット スロージェット ジェットニードル クリップ エアースクリュー開度 備考
CD50 中華5速125cc 125cc ノーマル
タイミング:中
145 48 90FTS 一番下
(上から7段目)
1.5回転 中間の開け閉めで若干カブる
CD50 純正・ボアアップ(デイトナ) 88cc ノーマル
タイミング:遅め
135 42 90FTS 一番下
(上から7段目)
中間以上でしょっちゅうカブるが、ジェットニードルはこれが一番調子良い。
加速ポンプがどうにもならないのでセッティング中断。
CD50 純正・ボアアップ(デイトナ) 88cc 115 35 90FTM 真ん中
(上から4段目)
2回転以上 スロー系から中間の間でカブる(これ以上小さいスロージェットが無い)

ジェットニードルを変更したセッティングや、加速ポンプの対応品を付けたセッティングなど調査中。別途追記予定。

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